国際規格であるISO19650-1だけでなく、ISO19650-2も同時に大幅な改定が行われています。ISO19650-2も現在、DIS(Draft International Standard:国際規格案)の段階にあり、各国からの意見募集を経て最終調整が進められています。

今回の改定で最も衝撃的な点は、これまで運用段階の情報マネジメントを規定していたISO19650-3:2020の内容が、ISO19650-2へ統合されることです。これまでISO19650シリーズでは、設計・施工段階をISO 19650-2、運用段階をISO19650-3として分けていました。しかし今回の改定では、その考え方が大きく見直され、設計・施工から運用・改修までを一つの情報マネジメントプロセスとして扱う構成へ変更することが提案されています。
この変更は、「情報は設計・施工が終われば引き渡して終わり」という考え方から、「建物やインフラのライフサイクル全体を通じて継続的に管理・活用する」という考え方へ転換することを意味しています。実はこれは、考え方の大きな変更になります。これまでは建物の新築時における設計施工がまず先にあり、その後に建物の運用・維持管理があるため、分けて考えるということでした。しかし、建物の運用段階においても、増築や改築といった設計施工を伴う業務があるため、ISO19650-3:2020においては、一部ISO19650-2を併用するという考え方でした。しかし、これは新築も増築・改築も、建物のライフサイクルを構成する一つの活動として捉える考え方へ転換したものと考えられます。
日本では、設計施工段階と運用段階を分けて考えたうえで、この情報を繋ぎたいけど繋がらないということが起きていますが、そもそも建物のライサイクル全体を考えて、新築の設計施工もその一部と考えるようになれば、情報の一元化は前提条件になるように思います。
これに伴い、これまで設計・施工段階の成果物として位置付けられていたPIM(プロジェクト情報モデル)は廃止される予定です。ライフサイクル全体を一つの情報マネジメントプロセスとして捉える考え方から、新築時の情報も、運用・維持管理の情報も、一つのAIM(資産情報モデル)として管理される方向へ変更される予定です。
この考え方を実現するため、新しいISO/DIS19650-2では、情報マネジメントプロセスそのものも大きく整理されています。現行版では、情報要求事項の作成から情報の生産、レビュー、承認、提供までが8つのステップに分けて規定されていましたが、改定案では、これらをライフサイクル全体で繰り返し実施する共通プロセスとして9つのステップになる予定です。
また、情報マネジメントプロセスはトリガーイベント(新築、改修、設備更新など)を起点として開始される構成となっています。これにより、新築だけではなく建物のライフサイクル全体で同じプロセスを適用できるようになっています。
このように説明すると、これまでのISO19650-2:2018とまったく違うものであるように思えますが、実はISO/DIS19650-2を新築の設計施工段階に適用した場合、元請受託組織や受託組織の活動は大きくは変わりません。用語などに変更はありますが、基本的な概念は踏襲されています。しかし、発注組織がこれに取り組む場合には、建物のライフサイクル全体を見据えて情報を管理するという、新しい情報マネジメントへの転換が求められることになります。
ISO19650-2において、設計・施工段階と運用段階を同じ情報マネジメントプロセスで管理するという考え方は、日本の建設業界が長年抱えてきた「設計・施工と維持管理の情報がつながらない」という課題を見直すきっかけになるかもしれません。つまり、ISO19650-2は「設計・施工のための規格」から、「建物のライフサイクル全体を対象とした情報マネジメント規格」へ進化しようとしていると言えるでしょう。
情報先
https://www.iso.org/standard/89704.html
情報公開日
2026年7月1日
担当者
伊藤久晴