分類
各国のBIMガイド
名称
THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK : 2023
リンク先
https://www.biminnz.co.nz/nz-bim-handbook
内容
THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK 2023は、ISO19650-1:2018およびISO19650-2:2018に準拠しながら、ニュージーランドでのBIMの取り組みを実践するハンドブックです。このハンドブックは、ニュージーランドでのBIM実践の共通文書として、資産のライフサイクル全体におけるBIMの活用推進・業界共通の共通言語の確立・設計施工の連携の強化などを目的として作られています。
このハンドブックでは、BIMを下記の様に定義しています。
「BIMとは、技術によって支えられた一連の協調的プロセスであり、建築物およびインフラ資産に関する構造化された情報の共有を通じて付加価値を生み出すものである。」BIMソフトウェアによる属性を持った3次元モデルの活用といった狭い範囲でのBIMではありません。
BIMワークフローについては、下図のようにISO19650-2の情報マネジメントプロセスを採用しています。この内容は、ISO19650-2:2018の5条の1~8を示しており、項目構成はほぼ一致しています。

従って、その他の情報要求事項(OIR・AIR・PIR)・情報交換要求事項(EIR)・BIM実行計画(BEP)などの概念もほぼ同じような内容です。このように、ISO19650の内容をこのハンドブックに多く含んでいるが、その理由として、下記の様な説明がされています。
「ニュージーランドにおけるISO19650の採用は近年勢いを増しており、一部のコンサルタントや発注者は標準化されたプロセスと情報マネジメントの重要性を認識し、ISO19650の原則を事業に取り入れています。」
これは、ニュージーランドでもISO19650が実務に広がりつつあることを示しており、それゆえに、このハンドブックに多くの概念が採用されているのだと考えられます。
但し、BIMユースの定義など、ISO19650にはない内容も含んでおり、これらはニュージーランドでのBIM標準として、国内の意見を反映しているものだと考えられます。このように THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK 2023 は、ISO19650ベースの情報マネジメントを、ニュージーランドの実務へ適用するための包括的な実践ガイドとして位置付けることができます。
解説
本ガイドラインの大きな特徴として、多数の附属書(Appendices)が用意されている点があります。Appendixでは、実務で利用できるテンプレートや具体的な運用方法まで含めて整理されています。
- 附属書 A:モデリングおよび図書作成のベストプラクティス
- 附属書 B:モデルコーディネーション
- 附属書 C:LOD(Level of Development)の定義
- 附属書 D:BIM Uses定義
- 附属書 E:調達方式とBIMプロセス
- 附属書 F:情報交換要求事項(EIR)テンプレート
- 附属書 G:LOD仕様テンプレート
- 附属書 H:BIM評価・回答テンプレート
- 附属書 J:BIM実行計画(BEP)テンプレート
- 附属書 K:モデル記述書(MDD)テンプレート
THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK 2019(旧版)の附属書DであるBIM Use定義については、日本でも日建設計によって翻訳・公開されています。これは、日本国内におけるBIM活用の理解を広げる上で非常に有意義な取り組みであると考えられます。一方で、このBIM Use定義のみを切り出して活用した場合、THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK全体で示されている情報マネジメントやBIMワークフローとの関係性が見えにくくなる可能性があります。そのため、本来はハンドブック全体の構成や意図と合わせて理解することが望ましいと考えられます。
https://www.nikken.jp/ja/news/press_release/pj4urv0000004mab-att/20220510_02.pdf

興味深い点として、THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK 2023本文はISO19650寄りの内容となっているのに対し、附属書の説明や内容については、従来のBIMモデル中心の取り組みを踏襲している部分も残されている点です。附属書テンプレートであるEIRやBEPについても、ISO19650 で規定されている内容を考慮しながら、従来の BIM 実務に基づく内容が一部見受けられます。これは、実践的には従来の取り組みを残しつつ、徐々に ISO19650 ベースの情報マネジメントへ移行しようとしている過程であると考えられます。
しかし、THE NEW ZEALAND BIM HANDBOOK 2023は、ISO19650-1及び-2の内容をニュージーランドの実務を考慮しながら積極的に取り入れようとしている点で、とても良い傾向を示していると考えられます。
掲載日
2026年6月1日
担当者
伊藤久晴