英語名 / 略字
organizational information requirements / OIR
出典
ISO19650-1:2018 3.3.3
規格での説明(原文)
information requirements in relation to organizational objectives
規格での説明(日本語)
組織の目的に関連する情報要求事項
説明
情報要求事項のうち、組織の情報要求事項(OIR:organizational information requirements)は、組織の戦略目標や経営目的を達成するために必要な情報を定義する要求事項であり、すべての情報要求事項の起点となります。
企業や組織が、建物という資産を整備し運用する背景には、必ず何らかの明確な目的があります。例えば、分譲マンションの建設であれば住戸販売による収益の確保、自社の本社ビルを建設する場合であれば、社員増員への対応や企業イメージの向上といった目的が挙げられます。そして、これらの目的を実現するために、省エネルギー性能の確保や洗練されたデザインの採用などのコンセプトを定める必要があります。企業や組織にとって建物は投資であり、経済的または社会的な価値の創出という目的を伴わなければ、その整備の意義は薄くなります。

この組織の情報要求事項(OIR)を実現するために、どのような資産(建物)を整備するのか、またどのように資産を運用するのかという観点で具体化したものが、資産情報要求事項(AIR:Asset Information Requirements)およびプロジェクト情報要求事項(PIR:Project Information Requirements)です。
資産情報要求事項(AIR)は、資産(建物)の運用のための要求事項ですが、設計や施工を行う上でも必要となる場合があります。すなわち、資産の運用に必要な情報であっても、設計施工段階においてその情報を生産する必要がある場合には、入札時に元請受託組織に対して提示されなければなりません。
解説
組織の情報要求事項については、ISO19650-1:2018 5.2において説明されています。OIRは、発注組織内の高レベルの戦略目的に応答し、またそれを通知するために必要な情報を定義するものであり、これらの要求事項は、戦略的事業運営・戦略的アセットマネジメント・ポートフォリオ計画・規制対応・方針策定など、さまざまな活動を背景として発生するとされています。
また、OIRは必ずしも建物の運用そのものに限定されるものではなく、例えば年次財務報告など、アセットマネジメント以外の目的に基づいて設定される場合もあります。このように、OIRは組織全体の活動に広く関係するものであり、建物という資産の整備や運用も、その一部として位置付けられます。
ISO19650-3:2020附属書A.2では、資産情報を必要とする活動およびOIRの例が示されており、例えば以下のような内容が挙げられています。
- 計画された改善活動の経済的便益の評価
- 資産のパフォーマンスを予測し、運用上の意思決定を支援するための情報
- 資産の利用不能や障害が運用および財務に与える影響の把握
これらは、資産(建物)を整備し運用する上で本来検討されるべき事項ですが、日本ではこれらの内容をBIMや情報マネジメントと結びつけて考えることは多くありません。その結果、設計施工段階で必要な情報が十分に定義されないままプロジェクトが進行し、後の運用段階において情報不足や手戻りが発生する要因となっています。
このように、資産を整備し運用する目的を明確にすることを出発点として、情報要求事項は体系的に整理され、具体化されていきます。すなわち、OIRは単なる上位概念ではなく、設計施工および運用における情報の在り方を決定づける根源的な要素であるといえます。
掲載日
2026年4月30日
担当者
伊藤久晴