英語名 / 略字
Asset Information Requirements / AIR
出典
ISO19650-1:2018 3.3.4
規格での説明(原文)
information requirements in relation to the operation of an asset
規格での説明(日本語)
資産の運用に関連する情報要求事項
説明
情報要求事項のうち、資産情報要求事項(AIR:Asset Information Requirements)は、資産(建物)の運用および維持管理に必要な情報を定義する要求事項です。AIRは、組織の情報要求事項(OIR)を実現するために、資産をどのように運用するのかという観点で具体化されたものです。
AIRは、資産の性能維持・保全・更新・運用効率の向上などを目的として必要となる情報を定義します。例えば、設備の仕様・設置位置・保守条件・交換周期・性能指標・運用履歴の管理方法などが含まれます。
これらの情報は主に運用段階で活用されるものですが、その多くは設計施工段階においてあらかじめ生産される必要があります。そのため、AIRは運用段階のための要求事項であると同時に、設計施工段階における情報生産の内容を規定する要求事項でもあります。

図に示すように、AIRはOIRに基づいて定義され、プロジェクト情報要求事項(PIR)とともに情報交換要求事項(EIR)へと具体化されます。EIRに基づいて情報が生産されることで、最終的に資産情報モデル(AIM)として活用可能な形で情報が整備されます。
解説
資産情報要求事項(AIR)は、しばしば「運用段階のための情報」として理解されますが、それだけでは不十分です。重要なのは、AIRは「運用段階で必要となる情報を、いつ、どの段階で生産するかを決めるもの」であるという点です。
例えば、設備の保全に必要な情報は運用段階で使用されますが、その情報の多くは設計段階で決定され、施工段階で確定されます。もしこれらの情報が設計施工段階で適切に定義されていなければ、運用段階で必要な情報を後から収集することになり、大きな非効率を招きます。
このため、AIRは単に運用のための要求事項ではなく、設計・施工段階における情報生産を規定する役割を持ちます。すなわち、AIRは「運用で使う情報」を起点として、「設計施工で何を作るべきか」を決めるものです。
日本では、設計・施工が完了した後に運用で必要な情報を検討するケースがありますが、このようなアプローチでは、必要な情報が不足したり、追加の調査や再作成が必要となる場合が少なくありません。これは、AIRが事前に定義されていないことに起因します。
したがって、AIRは運用段階の効率化のためだけでなく、設計施工段階の品質および生産性を向上させるためにも不可欠な要素であるといえます。
また、ISO 19650-1:2018 5.3では、AIRについて、次のように説明しています。
- AIR は、資産情報を生産するための管理面、商業面及び技術面を規定する。
- 管理面及び商業面には、情報標準及びデリバリーチームが実装する生産手法及び手順を含めることが望ましい。
- AIR の技術的側面は、資産関連のOIR に応答するために必要な詳細情報を指定する。 これらの要求事項は、組織の意思決定をサポートするためにアセットマネジメントの受託に組み込むことができるように表現することが望ましい。
- 資産情報要求事項(AIR : Asset Information Requirements)
- 一連のAIR は、資産の運用中に各トリガーイベントに応答して準備し、適切な場合は、セキュリティ要求事項も参照することが望ましい。
- サプライチェーンがある場合は、元請受託組織が受け取ったAIR を細分化して、自身の受託組織に転送することができる。元請受託組織が受け取ったAIR には、自身の情報要求事項を追加できる。
- アセットマネジメント戦略及び計画全体にわたって、いくつかの異なる受託が存在し得る。 これら全ての受託からのAIR は、資産関連の全てのOIR に対処するのに十分な、単一の首尾一貫した調整された一連の情報要求事項を形成することが望ましい。
このように、AIRは運用段階の資産情報を生産するための情報要求事項ですが、設計・施工を含む資産のライフサイクル全体の情報マネジメントを実施する上では、設計・施工の開始前から定義しておくことが重要です。これにより、設計・施工段階における情報生産の内容が明確になり、各受託組織に関係する内容については、情報交換要求事項(EIR)として具体化し、契約条件として提示する必要があります。
掲載日
2026年4月30日
担当者
伊藤久晴