英語名 / 略字
Project Information Requirements / PIR
出典
ISO19650-1:2018 3.3.5
規格での説明(原文)
information requirements in relation to the delivery of an asset
規格での説明(日本語)
資産のデリバリーに関連する情報要求事項
説明
情報要求事項のうち、プロジェクト情報要求事項(PIR:Project Information Requirements)は、プロジェクトの計画、設計・施工といった実行プロセスにおいて必要となる情報を定義する要求事項です。PIRは、組織の情報要求事項(OIR)および資産情報要求事項(AIR)に基づき、プロジェクトを適切に遂行するために必要な情報を具体化したものです。
PIRには、プロジェクトにおける意思決定・進捗管理・品質管理・コスト管理・リスク管理などに必要な情報が含まれます。例えば、設計段階における検討資料、施工段階における工程情報や出来形情報・品質確認のための検査記録などが該当します。

図に示すように、PIRはAIRとともに情報交換要求事項(EIR)へと具体化され、情報交換の単位として整理されます。これにより、プロジェクトの各段階において必要な情報が明確化され、適切なタイミングで情報が提供される仕組みが構築されます。
また、PIRは設計・施工業務依頼書における業務内容や成果物を規定する上位概念であり、業務依頼書はPIRに基づいて具体化されるものです。
解説
プロジェクト情報要求事項(PIR)は、しばしば「設計・施工で必要な情報」や「BIMで作成する成果物」として理解されますが、この理解は本質的ではありません。重要なのは、PIRは「プロジェクトにおける意思決定を支えるための情報」を定義するものであるという点です。
プロジェクトでは、各段階において様々な意思決定が行われます。例えば、設計案の選定・コストの調整・施工方法の決定・品質の確認などです。これらの意思決定を適切に行うためには、その判断に必要な情報があらかじめ定義され、適切なタイミングで提供される必要があります。PIRは、この意思決定に必要な情報を明確にするものです。
一方で、日本ではBIMがソフトウェアを用いた業務として捉えられることが多く、その業務範囲の中で必要とされる情報が整理されることにより、結果としてPIRに相当する内容が後付けで定義されている場合があります。このような場合、PIRは業務の一部として扱われ、設計・施工業務依頼書とは別のものとして認識されてしまいます。
しかし、本来のPIRは業務の中に含まれるものではなく、業務を規定する上位の情報要求事項です。すなわち、「どの意思決定のために、どの情報が必要か」を定義することにより、その結果として設計・施工業務の内容や成果物が決定される関係にあります。
したがって、BIMで何を作るか、どのようなモデルを作成するかといった内容は、PIRの結果として導かれるものであり、PIRそのものではありません。PIRは「情報を起点として業務を設計する」ためのものであり、業務依頼書やBIM業務はその実行手段として位置付けられます。
また、PIRは資産情報要求事項(AIR)とも密接に関連しています。プロジェクトの成果物の一部は最終的に資産の運用に引き継がれるため、運用に必要な情報(AIR)を満たすための情報も、プロジェクト段階で生産される必要があります。このため、PIRはAIRを満たすための情報生産の観点も含めて定義される必要があります。
- PIR は、特定の建設資産プロジェクトに関連して、発注組織内の高レベルの戦略目的に応答する又は通知するために必要な情報を説明する。
- PIR は、プロジェクトマネジメントプロセスとアセットマネジメントプロセスの両方から識別する。
- 一連の情報要求事項は、プロジェクト中の発注組織の主要意思決定ポイント毎に準備することが望ましい。
- 繰り返し発注するクライアントは、修正の有無にかかわらず、全てのプロジェクトにおいて採用できる一般的な一連のPIR を開発してもよい。
このように、PIRは単なる成果物の要求ではなく、プロジェクトの意思決定を成立させるための情報要求であり、その定義によって業務内容および情報デリバリーの在り方が決定されます。すなわち、PIRはプロジェクトにおける情報マネジメントの中核をなす要素であるといえます。
掲載日
2026年4月30日
担当者
伊藤久晴